中小企業診断士一次試験科目別攻略法:企業経営理論。試験の花形

他の科目すべてを配下に置く企業経営理論

企業経営理論は、大きく、経営戦略論、組織論、マーケティング論の3つからなります。

コンサルタント資格を標榜する中小企業診断士試験のメインと言っていいかと思います。

実際の企業経営も、事業領域を決め、マーケティング戦略を策定し、組織を編成し、それらを実現、支援するツールとして経営情報システムや運営管理、財務・会計があり、そこに一貫性が求められるわけです。

同様に一次科目である経済学・経営政策、および経営法務も戦略意の策定にあたって外部環境を正しく理解するのに必要な機能なわけです。

中小企業診断士の勉強は7科目どれから手をつけてもいいわけなんですが、企業経営理論のこうした位置付けから言えば、まずこの企業経営論を押さえた上で、他の科目を企業経営と関連付けながら学習していくという順序がいいと思います。

範囲が広い企業経営理論

企業経営理論の試験時間は90分。
(一次試験は60分科目が4科目、90分科目が3科目)

当然、それだけ扱う範囲が広いということになります。

冒頭で挙げた企業経営理論の3つの領域は、元は言えばそれぞれが一つの一次試験科目でした。

2001年に中小企業診断士試験改革が行われましたが、その際に3科目がこの企業経営理論に統合されたわけです。

企業経営理論の新旧比較

ちなみに経営法務という法律科目がありながら、労働法が企業経営理論の範疇なのは、労務管理をそのまま引き継いでいるからなんですね。

3科目が1科目に統合されたからといって、旧3科目のそれぞれの論点が省略されたわけではありません。
積み重なっただけ。
この科目の範囲の広さが想像できるかと思います。

設問数は例年30問前後と、同じ90分科目の運営管理40問前後に比べれば少ないのですが、長文の設問が多く、読み解くのに時間を要します。

一次試験とはいえ、単に用語を意味を知っているだけでは正解が難しい応用力が試される設問が大半を占めます。
ミニ事例問題と言っていいようなものも毎年出題されます。

2次試験が主戦場となる企業経営理論

冒頭で企業経営理論は中小企業診断士試験のメイン科目と言いましたが、それは2次試験における扱いでも同じことが言えます。
企業経営理論が直接関係する2次試験は次の2科目。

  • 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅰ
    「組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」
  • 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅱ
    「マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」

2次試験に関係すると言うよりも、主戦場が2次試験と言った方が正しいかもしれません。
学習の早い段階で2次試験ⅠとⅡの過去問を解いてみて、大雑把でもいいので聞き方や深さを摑んだ上で、一次対策を行ってください。

学習が面白い企業経営理論

好みにもよるのですが、戦略やマーケティングを学ぶのは面白いものです。

リアルでは戦略を実際に実行に移している企業があります。
その結果、どうなったのかという事例もあふれています。

ビジネス書の一大カテゴリでもあり、これを読めば理解も深まりますので、お勧めしたいところなのですが、試験対策としては費用(時間)対効果が悪すぎます。
ですから、それは合格後の楽しみに取っておいてください。

労働法の出題が減ることは当面ない

上にも書きましたが、科目の性格としては異質な気がするのが労働法規。
毎年4,5問(全体の1割)の出題があります。

長時間労働によるセンセーショナルな事件、政府による働き方改革等、昨今の動向を見れば、当面この分野からの出題が減ることはないと思われます。

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中小企業診断士一次試験科目別攻略法:中小企業経営・中小企業政策。求められる旬の知識

中小企業診断士一次試験の科目は、他の資格試験とも重なるものがおおいのですが、この中小企業経営・中小企業政策だけは中小企業診断士ならでは科目です。

暗記色の強い科目で、しかも試験のネタ元が毎年更新されるため、受験年度に特化した試験対策が必要です。

覚える範囲が広いために高得点は容易ではありませんが、定番的な設問を押さえ、若干のプラスアルファで60点のクリアを目指します。

中小企業経営・中小企業政策は文字とおり2つの分野から出題されます。

  • 中小企業経営
  • 中小企業政策

2つの分野の設問数はほぼ半々。
ただし、対策方法はそれぞれ異なります。
一つづつ説明します。

中小企業経営。前年度の中小企業白書がネタ。

中小企業全体の現況、課題、あるいは中小事業者が考えてること等についての見識を問うものです。

設問のネタ元は国が毎年発行する中小企業白書。
毎年4月~5月に発刊されますので、試験スケジュールから考えて前年度のものから出題されています。

当年度の白書からの出題があった年も過去には見受けられますが、だからといて対策の範囲を当年度の白書まで広げると労力は倍になります。
出題率からいってそれは費用(時間)対効果が悪すぎます。

中小企業白書は500ページを超えます。
中途半端にチラ見したぐらいでは点数に結びつきませんので、当年度の白書については割り切ってもいいでしょう。

試験対策としては白書を通読するだけではダメで、グラフを一つひとつ読み解いた上で、

  • トレンド
  • ピークや谷の年度
  • 最上位の項目名
  • 項目間の大小、高低

こうしたことを記憶に留めておかなければなりません。

概要版でポイントを押さえる

中書企業白書は書店で購入することができますが、PDF版やHTML版が無料でダウンロードできます。

白書のすべてを精読するのは時間的に困難です。
概要版として30ページほどにまとめられたものが、ダウンロードできますから、これをしっかりと押さえましょう。

推論力を高め、点数をアップを狙う

自分がチェックしていなかった統計、あるいは覚えていないことは正解できないなんてことはありません。
持てる知識を総動員して仮説を立てて回答することになりますが、選択肢を5択から2択までに絞れたりするものです。

中小企業の基本的な特性、
大企業との違い、
製造業、小売業、卸売業、サービス業の基本的な特性を押さえておくことは2次試験で必須ですが、この科目でも有効ですので押さえておきたいところです。

過去問にあたって鍛えるのもいいでしょう。
ただし、設問に使われている情報は古い場合がありますので注意してください。

小規模企業白書が試験ネタに加わる

2015年より中小企業白書とは別に小規模企業白書が毎年発刊されるようになりました。
20人以下、あるいは5人以下(業種による)の企業を対象にした統計です。

小規模企業白書も書店で購入することもできますし、無料のPDF版やHTML版を中小企業庁のサイトからダウンロードすることができます。

前年度のものがネタになるというセオリーどおり、2016年度の試験で3問出題されました。

1年だけで傾向は予想できないのですが、小規模企業白書も4、500ページありますから、全編にわたって対策することも、捨てることもリスクがあります。

中小企業白書と同様に30ページ前後の概要版が無料でダウンロードできますので、これをしっかり押さえておくが平均的な対策と言えます。

中小企業政策。過去問を押さえよう

国や地方自治体が行う支援策について問われます。
試験のネタ元となるのは「中小企業施策総覧」です。
書店で購入できますた、PDF版は無料で配布されています。
毎年は刊行されていません。
平成27年度中小企業施策総覧

施策利用者向けに、コンパクトにまとめてあるのが「中小企業施策利用ガイド」です。
毎年刊行されています。

申し込めば送料のみで入手できます。
中小企業庁広報冊子の請求ページ

また、PDFは無料でダウンロードできます。
「中小企業施策利用ガイドブック」
が送料のみの負担で入手できますし、PDFのダウンロードも可能です。

使い方としては、「中小企業施策利用ガイドブック」を主にしながら、理解を深めたい場合等に「中小企業施策総覧」を参考書的に利用すれば良いと思います。

過去問に当たりながら施策を押さえていくといいと思います。
その際に、解答・解説だけでスルーするのではなく、必ず最新の中小企業施策利用ガイドブックを開くようにします。
改正されている可能性がありますから。

また、重要施策は繰り返し出題されますが、全く同じ設問はあり得ませんから、違う聞き方をされても答えれるように施策のスキームを押さえていってください。

 

以上、中小企業経営・中小企業政策で60点を取るという前提で攻略法を述べてきました。
一方で、広いとはいえ範囲が明確な暗記科目ということは、時間を掛けさえすれば高得点が望めるということでもあります。

全科目の一発合格を目指す方(多くはそうでしょう)、ガッツがある方は、他の科目の点数をカバーする得点源科目としてもいいと思います。

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常識で解ける中小企業診断士一次試験:中小企業経営・中小企業政策。世の中を知っていれば得点できる

中小企業経営・中小企業政策は暗記色の強い科目です。
それはそうなんですが、常識と推論で正解できる設問もあります。

自分が白書でチェックしていた統計資料と本試験の設問がすべて一致しているなんてことはあり得ません。

チェックしていない統計資料が聞かれても、自分の持てる知識を総動員して得点に結びつけてください。

以下はそういう設問です。
考えてみてください。

 

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

生産年齢人口の減少や高齢化が進展する中、わが国経済の潜在的労働力として女性に注目が集まっており、女性が活躍できる環境づくりの必要性が高まっている。
総務省「平成24年就業構造基本調査」に基づき、男女別・年齢別就業率を見た場合、女性の就業率の特徴としてM字カーブの存在が指摘され、その解消が女性の活躍を促進する際の一つの目標とされている。

(設問1)
文中の下線部に関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア 20代前半の女性就業率が男性就業率に比べ低いこと。

イ 20代後半から30代にかけての女性就業率が低下すること。

ウ 30代後半から40代にかけての女性就業率が低下すること。

エ 40代後半から50代にかけての女性就業率が低下すること。

オ 50代前半の女性就業率が男性就業率に比べ低いこと。

 

答え  (白字なので反転させてください)

 

正解できましたか?

まず、アとオは、すぐに選択肢からハズレます。
だってM字の説明になっていません。

これで、5択が3択に絞ることができました。

あとはM字になる意味を考えればいいんですが、この理由については誰でも分かるハズです。
結婚、とりわけ出産と育児のために就業率が落ちるわけです。

で、その出産と育児に相当する年令帯を3つから選べばいいだけなんですが、さすがにエを選ぶ人はいないでしょう。

さあ、無勉強で5択が2択まで絞れました。

20代後半から30代か?、30代後半から40代か?
晩婚化著しい昨今、エを選んでしまった人もいるかもしれませんね。
ちょっとそれは時代を読みすぎです。

頭に入れて置かないといけないことは、設問の情報は2,3年は遅れているということです。

設問のネタ使われる中小企業白書は前年度のものです。
さらに、その白書に載っている図表はその前年や前々年度に行われた調査を集計、統計処理したものです。

今現在の感覚で答えると間違ってしまうこともありますので注意してください。

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