中小企業診断士一次試験における科目合格は翌年と翌々年まで有効です。
この制度を使えば、一次試験の7科目を3つに分けて、1年目、2年目、3年目と受験科目を減らし(=合格科目を増やし)ながら、3回の受験で一次試験を突破することも可能です。
このやり方は、一見、負担の少ない、確実な合格法に見えるかもしれませんが、科目合格を計画的とおりに勝ち取れるかは、かなり懐疑的です。
その理由は、科目別に見た合格率の変動が大きさです。
同じ試験とは思えない。科目合格率の差は25倍
以下に近年の科目別の合格率を示します。
科目ごとの最高が青、 最低がピンクです。
科目\年 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 |
経済学・経済政策 | 38.9% | 6.1% | 8.6% | 24.8% | 2.1% | 19.4% | 15.5% | 29.6% |
財務・会計 | 19.5% | 11.3% | 10.7% | 3.8% | 16.6% | 6.1% | 36.9% | 21.6% |
企業経営理論 | 18.8% | 19.9% | 13.1% | 12.5% | 6.8% | 13.4% | 16.7% | 29.6% |
運営管理 | 29.9% | 18.2% | 13.9% | 19.4% | 10.5% | 17.8% | 20.5% | 11.8% |
経営法務 | 10.5% | 12.7% | 23.3% | 18.1% | 21.1% | 10.4% | 11.4% | 6.3% |
経営情報システム | 3.8% | 25.8% | 36.1% | 25.8% | 51.8% | 15.0% | 6.4% | 8.5% |
中小企業経営・政策 | 2.9% | 24.2% | 5.1% | 17.4% | 16.9% | 31.1% | 12.2% | 12.5% |
いかがでしょうか?
科目合格率の変動幅の大きさに驚いたのはないでしょうか?
最も変動幅の小さな「経営法務」ですら17%の差があります。
最も変動幅の大きな「経営情報システム」に至ってはその差は48%。
4割近い合格率の年があるかと思えば、100人中2人しか合格しない年があるわけです。
科目合格率の変動はこれからも続く
毎年1万数千人が受験する試験で、受験生全体のレベルが年によって変化することは考えにくく、これだけ科目合格率が変動する要因は、問題の難易度の違いです。
そして、試験委員はそのことをさほど問題視していないようです。
現在の試験制度になってから10数年経ちますが、直近の試験でも相変わらず、科目合格率は大きくブレているからです。
科目合格率の変動が受験生に与える影響
この、科目合格率の変動が受験生にどういう影響を与えるかと言うと、例えば準備不足で臨んだ科目で科目合格したり、反対に、自信を持って臨んだ科目で落とすというようなことが起きます。
科目合格は計画通りにはいかないわけです。
3回の受験で1次試験を突破するつもりで、1回目の科目合格が計画通りにいかなかったとしても、修正が効きます。
しかし、3回目に突破できなければ、1回目の科目合格が無効になってしまいます。
科目合格を使って少ない受験科目で一次試験を突破しようとすると、受験準備の負担を軽くする一方で、難易度の低い科目の高得点の恩恵を受けられないリスクを高める、実は危険な戦略なわけです。
次のエントリで見てみます。
「中小企業診断士一次試験で一発合格を狙うのは、それが楽だから」