中小企業診断士試験1次科目と2次科目の関連と学習の濃淡のつけ方

中小企業診断士試験は、1次が企業の診断、助言に必要な知識を有することを判定するもの。
2次が、それら知識の応用能力を判定するものです。

1次の科目と2次事例の対応を示すのが以下の表です。

1次 2次
少し関連 もろ関連















 企




企業経営理論 事例Ⅰ 組織・人事
運営管理 事例Ⅱ マーケティング・流通
事例Ⅲ 生産・技術
財務・会計 事例Ⅳ 財務・会計
 経済学・経済政策  関連無し
  経営法務

受験校によっては、「少し関連」の左2科目(中小企業経営・政策と経営情報システム)について、潔く2次とは「関連なし」として扱ってるところもあります。
同様に、「少し関連」の企業経営理論が事例ⅢとⅣとは潔く「関連なし」としている受験校もあります。

この表は公式なものではありませんので、受験校によってそうした多少の表現の違いはあるものの、「もろ関連」の3科目と「関連なし」の2科目についてはどの受験校の見解にも違いはありません。

で、この表が受験生にとってどういった意味を持つかと言うと、科目によって、2次試験対策を意識した1次試験対策が求められるものと、そうでないものとがあるということです。

まず、「もろ関連」の3科目については、単に知っているレベルではなく、応用レベル、つまり局面によって優劣を選択し、使えるレベルまでを意識して学習するということになります。

例えば、企業経営理論では戦略策定のための様々なフレームワークを学びます。
一次試験では、そのフレームワークの意味や使い方を聞かれるだけです。

これが2次試験では、自分が知っている数あるフレームワークの中で何が最もフィットしそうか?、何を用いて論旨を展開するかを決めないといけません。

例えば、財務・会計では様々な経営指標を学びます。
1次試験では、示された経営指標から何が言えるを聞かれたり、指示された経営指標を値を求めるだけです。

これが2次試験では、その企業の特徴を示す最も適した経営指標は何かを自分で決めないといけないわけです。

その一方で、2次との「関連なし」の科目については、1次試験を突破できる必要最小限の理解に努めればいいわけで、論点によっては理解できなくても覚えてしまえばいいなんていう割り切りも有りだったりするわけです。

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科目別合格率の脅威の振れ幅。中小企業診断士一次試験の科目合格のコントロールはムリ

中小企業診断士一次試験における科目合格は翌年と翌々年まで有効です。

この制度を使えば、一次試験の7科目を3つに分けて、1年目、2年目、3年目と受験科目を減らし(=合格科目を増やし)ながら、3回の受験で一次試験を突破することも可能です。

このやり方は、一見、負担の少ない、確実な合格法に見えるかもしれませんが、科目合格を計画的とおりに勝ち取れるかは、かなり懐疑的です。
その理由は、科目別に見た合格率の変動が大きさです。

 

同じ試験とは思えない。科目合格率の差は25倍

以下に近年の科目別の合格率を示します。
科目ごとの最高が青、 最低がピンクです。

 科目\年 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
経済学・経済政策 38.9% 6.1% 8.6% 24.8% 2.1% 19.4% 15.5% 29.6%
財務・会計 19.5% 11.3% 10.7% 3.8% 16.6% 6.1% 36.9% 21.6%
企業経営理論 18.8% 19.9% 13.1% 12.5% 6.8% 13.4% 16.7% 29.6%
運営管理 29.9% 18.2% 13.9% 19.4% 10.5% 17.8% 20.5% 11.8%
経営法務 10.5% 12.7% 23.3% 18.1% 21.1% 10.4% 11.4% 6.3%
経営情報システム 3.8% 25.8% 36.1% 25.8% 51.8% 15.0% 6.4% 8.5%
中小企業経営・政策 2.9% 24.2% 5.1% 17.4% 16.9% 31.1% 12.2% 12.5%

いかがでしょうか?
科目合格率の変動幅の大きさに驚いたのはないでしょうか?

最も変動幅の小さな「経営法務」ですら17%の差があります。
最も変動幅の大きな「経営情報システム」に至ってはその差は48%。
4割近い合格率の年があるかと思えば、100人中2人しか合格しない年があるわけです。

科目合格率の変動はこれからも続く

毎年1万数千人が受験する試験で、受験生全体のレベルが年によって変化することは考えにくく、これだけ科目合格率が変動する要因は、問題の難易度の違いです。

そして、試験委員はそのことをさほど問題視していないようです。
現在の試験制度になってから10数年経ちますが、直近の試験でも相変わらず、科目合格率は大きくブレているからです。

科目合格率の変動が受験生に与える影響

この、科目合格率の変動が受験生にどういう影響を与えるかと言うと、例えば準備不足で臨んだ科目で科目合格したり、反対に、自信を持って臨んだ科目で落とすというようなことが起きます。

科目合格は計画通りにはいかないわけです。

3回の受験で1次試験を突破するつもりで、1回目の科目合格が計画通りにいかなかったとしても、修正が効きます。
しかし、3回目に突破できなければ、1回目の科目合格が無効になってしまいます。

科目合格を使って少ない受験科目で一次試験を突破しようとすると、受験準備の負担を軽くする一方で、難易度の低い科目の高得点の恩恵を受けられないリスクを高める、実は危険な戦略なわけです。

次のエントリで見てみます。
中小企業診断士一次試験で一発合格を狙うのは、それが楽だから

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中小企業診断士一次試験科目別攻略法:経済学・経済政策。ロジックさえ理解すれば高得点も

経済学・経済政策は平成13年(2001年)の試験改革で新たに加わった科目です。

では、それまでは経済学が試験と無関係だったのか言うと、そうでもなく、「〇〇に関する経済的知識」という似たような試験科目はあったんですね。
(〇〇には商業、工業、情報のいずれかが入る。当時は試験が3部門に分かれていた)

中小企業に経済学が必要か?
という議論はあるかもしれませんが、中小企業経営に直接の必要性がなくても中小企業診断士には必要な知識であるということです。

科目設置の目的には以下のようにあります。

マクロ経済指標の動きを理解し、動向を把握することは、経営上の意思決定を行う際の基本である。
また、経営戦略やマーケティング活動の成果を高めていくためには、ミクロ経済学の知識を身につけることも必要である。

なんだか大手企業の企業の経営者に向けたメッセージにも見えますが、とにかく必要だということ。

ただ、それだけ重要ならば、2次試験でも問われても良さそうですが、経済学・経済政策は2次試験とは関係がありません。

ですから、残念ながら一次で敗退しても、もし運良くこの経済学・経済政策で科目合格できたのなら、次回は迷わず免除申請して、他の科目に力を振り向けるべきです。

2次試験で問われないということは、理論を意思決定にどう反映させるかまでは考える必要はないわけです。
知識を詰め込みさえすればマークシート方式は得点可能です。

ただし、暗記科目ということではありません。
ロジックを理解しておかないと、ちょっと聞き方を変えられただけで、対応できないからです。
ロジックとは「風が吹けば桶屋が儲かる」的な理屈です。
納得感を得ながら学習を進めてください。

経済学・経済政策を苦手科目にしている人も多いのですが、その多くはグラフや数式へのアレルギーに近いものだと思います。

記号が散りばめられたグラフ、微分式。
確かに文系の人にとってはツライかもしれませんが、試験では微分式を計算させるような設問はありません。
考え方の理解を問うものばかりです。

一方で、企業行動に着目するミクロ経済学、そこから派生した行動経済学やゲーム理論などの領域は、興味深く学べる分野だと思います。
過去の問題を見ると、まったく勉強せずとも、普通の論理力で正解できるレベルの設問も少なくありません。

ちなみに私は中小企業診断士の受験対策を通じて初めて経済学を勉強した口ですが、この科目の面白さにハマりました。

経済学のテキストを開くと、いきなり、「三面等価とは、◆#$%□&▽*+」なんていうのが書かれていたりして閉口するかもしれません。

もし時間が許すのであれば、軽めの読みモノ的な経済学の本を読んでから、取り組むのも一つの手だと思います。
中小企業診断士転じて経済評論家の三橋貴明氏の本なんかお勧めです。

受験生当時、理解が進むにつれ、世の中の見方が少し変わったことを覚えています。
同時に、マスコミやコメンテータを始めとする知識層ですら、経済の基本を知らずにモノを言う人が多いということも分かりました。

中小企業診断士がそうであってはならないのは言うまでもありません。

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